ハッチョウトンボの羽化
2020.05.16
自然保護センターのハッチョウトンボは、5/11の初確認以降、暑い日が続いたため、徐々に個体数が増えているようでした。
5/15は朝から曇天でしたが、連日の快晴の状況から、ひょっとして?と思い、湿原に行ってみました。因みに、例年、羽化の観察の狙い時は5月末~6月初旬ですので、半月も早い撮影アタックになります。
やはり羽化個体は増えてる。地表から15~20センチ高の草の先端にとまり、夜露をまとったままじっとしている。どれも未成熟個体。一見して10個体前後見られます。
が…
羽化は高さ5~10センチ程度の低い丈の草の先端や、途中で行われる。枯れ草の場合もある。
高い草のある植生の中の低い位置で行われるので、なかなか見つけられない。
しばらくして目が慣れてくると羽化殻を見つけられるようになる。
夜露で湿った羽化殻は色濃く、生々しく見え、ひとつづつ確認していかないと、これから羽化するかもしれない生きたヤゴを見つけられない。これも羽化殻、これも、これも…
だいぶ探して諦めかけた頃、既にヤゴの背中が割れ、上体を出し、イナバウワー状態でのけぞっている羽化個体を見つけた!
トップ画像は全身が羽化殻から出てしばらくした状態のもの。羽が少し広がり、腹部も少しずつ大きくなってきている。
撮影2020/05/15、難波
1.「休止」
先ずは。
トンボの羽化には二通りの形があります。
「倒垂型」と「直立型」といわれ、今回ご紹介するハッチョウトンボは「倒垂型」になります。
羽化の状態にはいろいろな段階があるようで、ヤゴが水中から地上に出てきて、羽化する場所にとどまる事を「定位」、背中が裂けて羽化が始まる様子を「裂開」といいますが、今回、その様子は見つけられませんでした。
(というか、他の種類も含め、なかなか見つけられない…)
発見時の状態は頭部と胸部をヤゴから出し、のけ反った状態でぶら下がっている状態。いわゆる「休止」という状態でした。
「休止」も、初期では身をよじるようにしたり、いごいごしながら徐々に出てきている様子を観察できますが、あまり代わり映えはしません。腹筋トレーニングのように今にも上体を起こしてきそうですが、ここからが割と長い。「休止」とはうまく言ったものです。
2.「脱出直前」
「休止」から「脱出直前」までの、上体を起こす動作ですが、結構唐突なものですから撮り損なうのが常となっています。
湿原の中に三脚や足を入れたくはないので、無理な姿勢に耐えられず、辛抱たまらず一息ついたところで見逃す…というのがパターンとなっております。
3.「脱出直後」
今回は、この「脱出」の様子を見ることができました。
写真は「脱出直後」ではあるけれども、内容的には「脱出中」のような感じでしょうか。
トップ画像は、「脱出直後」からしばらく時間が経過し、翅が伸びている状態です。
4.翅が伸びてくる
くしゃくしゃにした紙屑を伸ばすように、翅が展開します。
種類によって違いますが、時間がかかります。
トンボにとって翅は重要で、ここで強風や、急な天候変化、接触等の外圧を受けると将来が台無しです。
観察に際しても、驚かさないように、場を荒らさないように、また他のお客様の迷惑にならないように等の配慮が必要です。
5.腹部が伸びる
なんと、ここまで撮影してきた個体よりも少し近い位置で、既に羽化している個体を2つ見つけました…
撮影のために手前の草むらを荒らさなくて良かった…
状態から見て、同じようなタイミングだったようです。
計3個体とも同じように翅が伸び、腹部が伸びてきています。発見からちょうど1時間が経過。
この後、翅はさらに伸びてしっかりしてきて、外観的には光が反射してキラキラするようになってきます。平行して腹部は、今は反っていますが、そのうち直線的になってきて、肛門水という余分な水分を腹部の先から排出し、スリムになっていきます。
飛べるようになると翅を広げますが、広げたまましばらく待機することが多い。
ここで驚かすと、うまく飛べないまま水面に落ちたりして翅に致命傷をおったりしますので、そっと見守りましょう。
ここから先、翅を広げるまでどれぐらいの時間がかかるのかちょっとわからず、後ろ髪を引かれる思いで撤収です。
ハッチョウトンボの羽化や交尾行動等は、これから個体数が増えてく時期で徐々に見ることができるようになると思います。早朝である必要はありません。開園時間からお昼頃までが良いかと思います。あまり風のない天気の良い日にどうぞ。熱中症の恐れがありますので飲み物をお忘れ無く。